【外国人医療費問題】なぜ日本人の3倍請求されるのか?女性が提訴!
短期滞在の外国人に対する日本の医療費請求が、日本人無保険者の3倍に上るという問題が明らかになりました。国籍を理由とした不当な差別ではないかとして、中国人女性の遺族が提訴。
短期滞在外国人の医療費問題:事の経緯
日本に短期滞在していた中国人女性が、救急搬送された際の医療費を巡り、国立循環器病研究センターを提訴するという異例の事態が起きています。これは、無保険の日本人であれば1点10円で算定される医療費が、外国人であるという理由で1点30円(3倍)で請求されたことに対し、「国籍を理由とする不当な差別だ」と訴えているものです。そもそも、短期滞在の外国人は、日本の公的医療保険に加入することができません。今回のケースでは、長女に会うため短期滞在(90日)の在留資格で来日しましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で帰国できず、特別措置として在留期間の更新を繰り返していました。しかし、この特別措置も90日間の在留資格更新だったため、公的医療保険の加入義務である「在留期間90日超」の要件を満たすことができず、無保険状態が続いていました。このため、救急搬送され治療を受けた際、病院側は自由診療として1点30円で算定し、総額675万円を請求。女性側はすでに日本人と同じ1点10円で算定した225万円を支払っていますが、差額の450万円の支払いを免除するよう求めています。
出典:読売新聞
日本の医療制度の仕組み:外国人に対する請求の現状
日本では、国民皆保険制度が採用されており、公的医療保険に加入していれば医療費の1~3割を自己負担するだけで済みます。しかし、公的医療保険に加入していない場合は「自由診療」となり、各医療機関が独自に料金を定めることができます。通常、無保険の日本人には診療報酬(医療行為ごとに定められた点数)が1点10円で算定されるのが一般的です。一方で、外国人に対しては、病院によって1点20円や30円、あるいはそれ以上で算定されるケースが散見されます。これは、通訳を介したコミュニケーションコストや、医療費の未払いリスク、事務手続きの煩雑さなどが加味されるためです。
「国籍差別」は成立するのか?法的・倫理的観点
今回の訴訟の最大の争点は、この「医療費の差額」が国籍を理由とした差別にあたるか否かです。訴訟の代理人弁護士は、憲法が保障する「法の下の平等」や国連の「自由権規約」に反すると主張しています。しかし、病院側には病院側の事情もあります。外国人患者は、支払い能力の確認が困難であり、未払いリスクが高いとされています。厚生労働省が実施した調査では、外国人患者を受け入れた医療機関のうち、約半数が医療費の未払い問題を経験しており、その未払い額は年間で数千万円に及ぶケースもあります。このような未払いリスクを回避し、経営を維持するため、事前に高額な保証金を求めたり、診療単価を高く設定したりする病院が少なくありません。今回の訴訟では、法廷でこれらの主張がどうぶつかるか注目されています。