スラムダンク聖地問題:鎌倉市が挑む観光客マナー改善の実証実験
神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄鎌倉高校前駅近くの踏切に、訪日客を中心とする観光客が押し寄せている問題で、鎌倉市は13~16日の4日間、新たに踏切西側の公園に撮影エリアを設け、周辺に市職員を配置して観光客を誘導し、マナー向上を呼びかける実証実験を行う。多くの観光客が訪れる鎌倉高校前駅近くの踏切(昨年4月)
踏切はバスケットボール漫画「スラムダンク」の「聖地」として知られ、2010年代から観光客が増加。特に22年の映画公開以降は訪日客らの混雑に拍車がかかった。市は17年から交通誘導員を置いて注意喚起を始めたが、周辺住宅街では敷地への無断立ち入りやゴミ捨て、違法駐車などの迷惑行為が続いている。
市によると、8月下旬に白タクとみられる駐車車両を注意した自転車の中学生が、バックしてきた車両と接触する事故が発生。この中学生の保護者からは、早急な対策を求める陳情も市議会に提出された。
市観光課は「地元の子どもが危険な目に遭ったことは看過できず、秩序を保つための対策が必要」として、多くの観光客が見込まれる3連休を中心に緊急の実験を行うこととした。
実証実験では、通常配置されている交通誘導員に加え、市職員を毎日12人配置。踏切西側の公園に設けた撮影エリアに観光客を誘導し、車道や歩道での撮影を防止する。ゴミ箱も公園内に設置し、私有地への立ち入り禁止や周辺道路への駐車禁止も呼びかける。
同課は「どこまで言うことを聞いてくれるのか、どういうトーンで注意すればいいのかなどの基礎データを集めた上で、次の対策を考えていきたい」としている。
出典:読売新聞
江ノ電踏切に押し寄せる観光客の背景
神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄鎌倉高校前駅近くの踏切は、バスケットボール漫画「スラムダンク」のオープニングに登場する「聖地」として、2010年代から観光客が急増しました。特に2022年の映画公開以降は、アジア圏を中心に海外からの訪日客が殺到し、その混雑に拍車がかかっています。多くの観光客は、アニメの世界観を追体験し、作中と同じアングルでの写真を撮ることを目的として訪れます。SNSの普及もこの現象を加速させ、美しい景色とアニメの融合が、訪日外国人にとって魅力的なフォトスポットとなっています。しかし、その一方で、一部の観光客によるマナー違反や交通ルールの軽視が常態化し、地域住民の生活に大きな影を落としています。
子どもの事故が浮き彫りにしたオーバーツーリズムの現実
観光客の集中は、地域に様々な課題をもたらしています。周辺の住宅街では、敷地への無断立ち入り、ゴミのポイ捨て、違法駐車などが常態化し、住民は長年にわたり迷惑行為に苦しんできました。特に深刻なのは交通安全の問題です。観光客が車道に出て撮影したり、警笛が鳴る踏切内で立ち止まったりする危険行為が頻発しています。鎌倉市は2017年から交通誘導員を配置して注意喚起を行ってきましたが、問題の根本的な解決には至っていません。そして今年8月下旬には、白タク(無許可で営業する違法なタクシー)とみられる駐車車両を注意した自転車の中学生が、バックしてきた車両と接触する事故が発生しました。この事故は、観光客と地域住民の共存の難しさ、そして対策の遅れが子どもたちの安全を脅かす現実を浮き彫りにしました。事故後、中学生の保護者からは早急な対策を求める陳情が市議会に提出されるに至っています。