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国交省が描く置き配効率化戦略とセキュリティ課題

国土交通省はは、荷物を玄関先に届ける「置き配」の活用を進めるため、オートロック付きマンションへの配達を効率化する支援に乗り出す。

 配達員が共同玄関を解錠できる共通のシステム開発費用を補助する。再配達を減らして人手不足に対応するのが狙いで、国交省は防犯上のリスクも踏まえ制度設計を急ぐ。

 マンションには、配達員が荷物の伝票番号を機器に入力すれば、オートロックを解錠できるシステムを導入している物件もある。しかし仕様はバラバラで、大手宅配業者に限っている場合が多い。配達員が入れるマンションと入れないマンションが混在し、再配達の削減効果は限られている。

 国交省は有識者や宅配業者、システム企業などと検討を始める。宅配業者とマンションで共通のシステムを導入するため、宅配業者間で異なる伝票番号の付け方や配送データの共通化について課題を整理する。国交省は早ければ2026年度にも導入したい考えで、支援に必要な費用を26年度の当初予算に計上する方針だ。

 一方で国交省は、配達員によるマンションの出入りに不安を感じる住民も多いため、システムの導入にはマンションの管理組合との合意なども促す方向だ。

 ネット通販の普及により、24年度の宅配便の取扱個数は19年度より16%増えて50億3147万個となり、10年連続で過去最多を更新した。一方で、物流業界では24年4月にトラック運転手の時間外労働の上限が規制され、人手不足が深刻化している。国交省は24年度までに宅配便の再配達率を6%に下げる目標を掲げていたが、国内大手の再配達率は今年4月時点で8・4%となっている。

 総務省の調査では、全国の共同住宅の4割超(23年時点)がオートロック付きで増加傾向が続いている。再配達を防ぐための宅配ボックスは、設置する場所が必要で費用負担も重く、置き配の促進が再配達削減の切り札の一つとされる。ただ、住民以外が建物内に入れるシステムとなるため、国交省は防犯上の課題を含め、慎重に検討を進める方針だ。
出典:読売新聞

オートロック解錠システム共通化の仕組みと、それに伴う新たな不安

再配達削減の大きなネックとなっているのが、オートロック付きマンションへの配達です。現在、一部のマンションでは、配達員が荷物の伝票番号を専用の機器に入力することで、オートロックを解錠できるシステムが導入されています。しかし、その仕様はマンションごとにバラバラで、ヤマト運輸や佐川急便といった大手宅配業者に限られている場合がほとんどです。このため、配達員が入れるマンションと入れないマンションが混在し、効率的な置き配が進まない原因となっていました。

そこで国土交通省は、この非効率を解消すべく、配達員が共同玄関を解錠できる共通システムの開発費用を補助する支援に乗り出す方針です。宅配業者間で異なる伝票番号の付け方や配送データの共通化といった課題を整理し、どの宅配業者でも利用できる画期的なシステムを目指すとしています。早ければ2026年度にも導入したい考えで、必要な費用は同年度の当初予算に計上される予定です。一見すると、非常に合理的な解決策に見えますが、この「共通解錠システム」が新たな不安の種となる可能性も指摘されています。

マンションの安全は大丈夫か?住民に忍び寄る防犯リスクへの懸念

国が主導するこのシステム導入に対し、多くのマンション住民から「防犯上のリスクが高まるのではないか」という強い懸念の声が上がっています。オートロックは、マンションの居住者以外の侵入を防ぎ、安全を守るための重要なセキュリティ機能です。しかし、この共通システムが導入されれば、配達員という「住民以外」が、いつでも建物内に立ち入ることが可能になります。

総務省の調査によれば、全国の共同住宅の4割超(2023年時点)がオートロック付きであり、その数は増加傾向にあります。これらの住民にとって、見知らぬ人物が頻繁にマンション内を出入りすること自体が心理的な不安につながります。さらに懸念されるのは、システムが悪用されたり、配達員を装った不審者が侵入したりする可能性です。もし一度でも不審者侵入などの事件が発生すれば、マンション全体の資産価値や住民の安心感は大きく損なわれてしまいます。国土交通省も、こうした配達員によるマンションの出入りに不安を感じる住民が多いことを認識しており、システムの導入にはマンションの管理組合との合意形成を促す方針ですが、住民の安全を守るための具体的な対策がどこまで担保されるのか、強い疑問が残ります。

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